医療機関や廃棄物処理業者にお勤めで、感染性廃棄物の取り扱いに悩んでいる方に向けて解説します。環境省のマニュアルが改定されたため、最新の基準に合わせた対応が求められています。この記事では、令和8年(2026年)1月に更新された最新版マニュアルの重要な変更点と具体的な対応手順をわかりやすくお伝えします。最後までお読みいただくことで、自社の運用を適法かつ安全に見直すことができます。
感染性廃棄物とは
廃棄物の処理を見直すためには、まず対象となる廃棄物の定義を正確に把握することが重要です。医療機関から排出されるゴミのすべてが感染性廃棄物に該当するわけではありません。ここでは、法律上の位置づけと、具体的な判断基準について解説します。
| 項目 | 概要 |
| 根拠法令 | 廃棄物処理法 |
| 分類 | 特別管理一般廃棄物、または特別管理産業廃棄物 |
| 対象施設 | 病院、診療所、衛生検査所、介護老人保健施設など |
| 主な該当物 | 血液が付着したガーゼ、使用済みの注射針、メスなど |
特別管理廃棄物として定義

感染性廃棄物とは、医療関係機関等から生じ、人が感染するおそれのある病原体が含まれたり付着したりしている廃棄物のことです。通常の廃棄物よりも危険性が高いため、廃棄物処理法において特別管理廃棄物として厳格に定義されています。
具体的には、感染性一般廃棄物と感染性産業廃棄物の2つに分かれます。血液が付着した包帯などは一般廃棄物、注射針や血液そのものは産業廃棄物として扱われます。環境省の「感染性廃棄物処理マニュアル」では、これらの廃棄物を適正に処理するための基準が示されています。
このように、法令で明確に定められた基準に従って取り扱う必要があります。つまり、感染リスクのある廃棄物は通常のゴミとは完全に切り離して管理しなければならないということです。
形状や排出場所で判断
廃棄物が感染性廃棄物に該当するかどうかは、形状、排出場所、感染症の種類の3つのステップで判断します。現場の担当者が迷わないよう、明確な基準を設けることが大切です。
まずは形状からの判断です。注射針やメスなどの鋭利なもの、あるいは血液や病理廃棄物などは、その時点で感染性廃棄物となります。次に排出場所を確認します。感染症病床や検査室から排出されたものは、感染リスクが高いとみなされます。最後に、どのような感染症の治療に使われたかを確認します。感染症法で指定された特定の感染症に関する廃棄物は、厳密な処理が求められます。
判断に迷うケースとして、血液が少量だけ付着したガーゼなどがあります。このような場合でも、環境省のマニュアルに記載されたフローチャートに沿って確認すれば、正しい分類が可能です。現場で判断基準が曖昧になっていると、誤って一般ゴミとして捨ててしまう危険性があります。そのため、院内のマニュアルを最新の基準に合わせて整備することが不可欠です。
最新版マニュアルの改定ポイントは

環境省の感染性廃棄物処理マニュアルは、社会情勢や法令の変更に合わせて定期的に更新されています。とくに最近の改定では、現場の運用に直結する重要な変更が行われました。ここでは、最新版における主な改定ポイントを解説します。
| 改定時期 | 主な改定内容 | 影響・対応 |
| 令和5年5月 | 新型コロナの5類移行に伴う取り扱いの変更 | 感染性廃棄物としての判断基準を通常の運用に戻す |
| 令和8年1月 | 廃棄物データシート(WDS)様式の最新版への差し替え | 委託時の情報提供フォーマットを新様式に移行する |
新型コロナの扱いを変更
感染性廃棄物処理マニュアル令和5年(2023年)5月の改定では、新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行したことに伴う見直しが行われました。ただし、5類移行後も新型コロナ関連の廃棄物は引き続き感染性廃棄物として扱われており、特に紙おむつについては「患者の糞便において検出例があること」を理由に、特例として感染性廃棄物の取扱いが継続されています。
データシート様式を更新
令和8年(2026年)1月の更新では、廃棄物情報の提供に関するガイドラインの改定に伴い、廃棄物データシート(WDS)の様式が最新版に差し替えられました。WDS
感染性廃棄物を処理業者に委託する際、このWDSを適切に作成し交付することが求められます。古い様式のまま運用を続けてしまうと、情報の伝達漏れが発生し、処理工場での事故につながるおそれがあります。そのため、医療機関や処理業者の担当者は、環境省のウェブサイトから最新のWDS様式をダウンロードし、自社のシステムや書類フォーマットを速やかに更新することが重要です。
感染性廃棄物を排出する際のリスクと注意点は
感染性廃棄物の処理を誤ると、事業存続を脅かす重大なトラブルに発展する可能性があります。リスクを正しく理解し、事前に対策を講じることが管理者の責務です。ここでは、法令違反と事故発生の2つの側面から注意点を解説します。
| リスクの種類 | 具体的な内容 | 発生時の影響 |
| 法令違反リスク | 無許可業者への委託やマニフェストの虚偽記載 | 行政指導、罰金、措置命令、社会的信用の失墜 |
| 感染事故リスク | 注射針の突き抜けによる針刺し事故 | スタッフの感染、労災認定、業務の停止 |
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法令違反による罰則を回避
廃棄物処理法では、排出事業者責任が厳しく問われます。感染性廃棄物を不適切に処理した場合、処理を委託した医療機関側も罰則の対象となることがあります。過去には、処理費用を安く抑えるために無許可の業者に委託したり、一般ゴミに混ぜて廃棄したりして、医療機関が書類送検された事例が存在します。不法投棄が発覚した場合、生活環境保全上の支障除去命令を受けることになります。
このような事態を防ぐためには、必ず特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を持った業者を選定することが必須です。さらに、電子マニフェストなどを活用して、最終処分まで適正に行われたかを追跡確認する体制を整えなければなりません。
針刺しなどの感染事故を防止
院内における感染性廃棄物の取り扱いで最も警戒すべきなのが、針刺し事故です。使用済みの注射針やメスが専用の容器に正しく廃棄されず、ゴミ袋を突き破って清掃スタッフや看護師に刺さってしまうケースが後を絶ちません。
このような事故が起きると、血液を介してB型肝炎やC型肝炎、HIVなどに感染する重大なリスクが生じます。スタッフの安全を守るためには、鋭利な廃棄物を入れる容器として、物理的に貫通しない堅牢な専用プラスチック容器を使用する必要があります。また、容器のふたを確実に閉めるルールを徹底し、廃棄物が満杯になる前に新しい容器と交換する運用を習慣づけることが重要です。
マニュアルに沿った正しい保管と処理の手順は

感染性廃棄物を安全かつ合法的に処理するためには、排出から最終処分までの各工程で定められたルールを守る必要があります。環境省のマニュアルには、具体的な手順が明記されています。ここでは、保管と委託の重要なステップを解説します。
| 処理工程 | 実施すべき具体的な手順 | 注意すべきポイント |
| 分別・梱包 | バイオハザードマークを付けた専用容器に分別する | 鋭利なもの、固形状のもの、液状のもので容器を分ける |
| 保管 | 鍵のかかる専用の保管場所で保管する | 関係者以外が立ち入れないようにし、保管期間を短くする |
| 委託 | 特別管理産業廃棄物の許可業者と契約を結ぶ | マニフェストを交付し、最終処分までの完了を確認する |
密閉容器で厳重に保管
感染性廃棄物が発生したその場所で、直ちに専用の容器に分別することが基本です。一度別のゴミ箱に入れたものを後から移し替える行為は、感染リスクを高めるため絶対に行わないでください。容器には、中身が感染性廃棄物であることが一目でわかるように、バイオハザードマークを表示する必要があります。鋭利なものは黄色、固形状のものは橙色、液状や泥状のものは赤色といったように、マークの色で内容物を区別するのが一般的なルールです。
梱包した容器は、収集業者が引き取りに来るまで、専用の保管場所で厳重に管理します。保管場所は関係者以外が立ち入れないよう施錠し、周囲に感染性廃棄物保管場所である旨の掲示を行うことが法令で義務付けられています。
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許可業者へ適正に委託
自社で処理施設を持たない医療機関は、外部の専門業者に処理を委託することになります。この際、必ず都道府県知事等の許可を受けた特別管理産業廃棄物収集運搬業者および処分業者と書面で契約を結ばなければなりません。
契約を結ぶだけでなく、廃棄物を引き渡す際には必ずマニフェストを交付します。近年では、管理の手間を減らし透明性を高めるために、電子マニフェストの導入が推奨されています。委託後も排出事業者としての責任は残るため、マニフェストの控えを確認し、最終処分が適正に完了したことを確実に把握する運用を構築してください。
マニュアルに基づく適正処理の導入事例は
医療機関や廃棄物処理業者においては、環境省が定めるマニュアルに沿った確実な対応が求められています。具体的な事例を確認することは、自施設における運用を見直すための良いヒントになります。ここからは、院内での滅菌処理に関する実際の取り組みを紹介していきます。
済生会富山病院における院内滅菌機の導入事例
株式会社東陽テクニカの公式サイトでは、済生会富山病院による感熱圧縮型滅菌機「DISPOPAC」の導入事例が紹介されています。同病院は、感染性廃棄物の増加とそれに伴う処理費用の課題を抱えていました。同装置を導入した結果、感染性廃棄物を院内で滅菌処理することが可能になりました。処理後の廃棄物は容積が小さくなるため、保管スペースの縮小にもつながっています。コスト削減だけでなく、職員の安全確保という多方面でのメリットが生まれている事例です。
感染性廃棄物処理マニュアルのまとめ
この記事の要点をまとめます。
- 感染性廃棄物は廃棄物処理法で特別管理廃棄物として厳格に定義されている
- 令和8年1月の改定で廃棄物データシートの最新様式への移行が必要となった
- 不適正な処理は重大な法令違反や針刺し事故などの感染リスクを引き起こす
- バイオハザードマークでの分別と許可業者へのマニフェスト交付が必須である
- 現場での分別徹底にはわかりやすい環境づくりと定期的な指導が効果的である
感染性廃棄物の適正処理は、医療現場の安全と社会的信用を守るための重要な基盤となります。最新のマニュアルに合わせて院内の体制をアップデートし、安心して業務に取り組める環境を整えてください。