医療現場では日々多くの廃棄物が発生しますが、「この段ボールはどう捨てればいいのか」と迷う瞬間はないでしょうか。特に医療廃棄物においては、中身が入った「容器としての段ボール」なのか、薬品などが送られてきた「梱包材としての段ボール」なのかによって、法律上の扱いが天と地ほど異なります。
間違った捨て方をしてしまうと、不法投棄とみなされたり、収集スタッフへの針刺し事故などの感染リスクを招いたりする可能性があります。この記事では、医療機関のスタッフや管理者が自信を持って廃棄作業を行えるよう、医療廃棄物に関連する段ボールの正しい捨て方と分別ルールをわかりやすく解説します。
読み終わる頃には、手元にある段ボールをどのルートで処理すべきかが明確になり、スタッフへの指導もスムーズに行えるようになります。
医療廃棄物の段ボールはどのように捨てるべきか?
医療機関から出る段ボールには大きく分けて2つの種類があります。一つは感染性廃棄物を入れるための「専用容器としての段ボール」、もう一つは薬剤や備品が梱包されていた「空の段ボール」です。まずはこの2つを明確に区別することから始めます。
中身と用途で分別区分を判断する
廃棄しようとしている段ボールがどちらに該当するかを判断する基準は、「感染性廃棄物が中に入っているか」および「感染性廃棄物の容器として指定されているか」です。以下の表で、それぞれの区分と基本的な処理方針を整理しました。
| 段ボールの種類 | 中身の状態 | 法的な区分 | 処理方法 |
| 専用段ボール容器 | 血液付着物やおむつなどが入っている | 特別管理産業廃棄物(感染性廃棄物) | 容器ごと密封して焼却処理 |
| 梱包用・空き箱 | 未使用で汚れがなく、中身は空 | 事業系一般廃棄物(紙くず) | リサイクルまたは一般廃棄物として処分 |
| 汚染された空き箱 | 血液や薬品が付着してしまった | 特別管理産業廃棄物(感染性廃棄物) | 専用容器に入れて焼却処理 |
このように、段ボール自体の素材が紙であっても、その用途や状態によって「燃やすしかない危険物」なのか「リサイクル可能な資源」なのかが変わります。判断に迷う場合は、安全側に倒して「感染性廃棄物」として処理するのが鉄則です。
専用容器はそのまま感染性廃棄物として焼却する
「医療廃棄物用」として販売されている段ボール容器(バイオハザードマーク付きの箱など)を使用している場合、その箱はゴミ箱ではなく「廃棄物そのもの」として扱います。したがって、中身がいっぱいになったからといって、中身だけを別の袋に移し替えたり、段ボールを解体したりしてはいけません。
この段ボール容器は、中身が入った状態で蓋を密閉し、箱のまま収集運搬業者に引き渡します。最終的には箱ごと焼却炉に入れられ、高温で滅菌・焼却処理されます。段ボール自体が感染源を封じ込める役割を果たしているため、原形を保ったまま処理フローに乗せることが重要です。
梱包用の空き箱は産業廃棄物として処理する
一方で、医薬品やガーゼなどが納品された際に使われていた「外箱の段ボール」は、血液や体液が付着していない限り、感染性廃棄物には該当しません。「事業系一般廃棄物(紙くず)」として処理する必要があります。
自治体によっては資源ごみとして回収してくれるケースもありますが、原則としては一般廃棄物収集運搬許可業者に委託してリサイクルや処分を行います。感染性廃棄物の専用容器とは混ぜず、別の場所に保管して、「古紙」や「段ボール」として排出するルートを確保してください。
専用段ボール容器(感染性廃棄物)の正しい処理手順は?

ここからは、「医療廃棄物を入れる専用段ボール箱」の具体的な捨て方について深掘りします。安全を確保するためには、詰める段階から引き渡しまでの一連の流れを手順通りに進める必要があります。
密閉してバイオハザードマークを確認する
段ボール容器を排出する際、最も重要なのは「内容物が外に漏れ出さないこと」と「一目で危険物だとわかること」です。容器の許容量(一般的には8分目程度)まで廃棄物が溜まったら、ガムテープなどを使用して隙間なく厳重に封をします。このとき、粘着力の弱い養生テープではなく、布テープなど強度の高いものを使用することをおすすめします。
また、容器には必ず「バイオハザードマーク(感染性廃棄物識別表示)」を見えやすい位置に貼付します。多くの専用容器には最初から印刷されていますが、見えにくい場合や破損している場合は、シールを貼って補います。このマークがあることで、運搬や処理に関わるすべての人が「触れる際には注意が必要だ」と直感的に認識できるようになります。
内容物の形状に合わせて色を使い分ける
感染性廃棄物は、中身の性状によって3種類に分類され、それぞれ推奨される容器の色(バイオハザードマークの色)が決まっています。段ボール容器を使用する場合、主に「固形物」を入れることになりますが、以下の区分を正しく理解しておく必要があります。
| マークの色 | 対象となる廃棄物 | 適した容器の種類 | 段ボールの使用可否 |
| 黄色 | 鋭利なもの(注射針、メスなど) | 貫通しない堅牢なプラスチック容器 | 不可(貫通の危険があるため) |
| 橙色 | 固形物(血液付着ガーゼ、チューブなど) | 丈夫なプラスチック容器または二重袋入り段ボール | 可 |
| 赤色 | 液状・泥状のもの(血液、廃液など) | 漏れない密閉プラスチック容器 | 不可(漏洩リスクが高いため) |
段ボール容器が使用できるのは、主に「橙色(オレンジ)」の区分にあたる固形物です。注射針などの鋭利なものは段ボールを突き破って収集作業員に怪我をさせる恐れがあるため、必ず専用の硬いプラスチック容器に入れてください。どうしても段ボールに入れたい場合は、硬い容器に入れた上で、それをさらに段ボールに入れる「二重梱包」にする必要があります。
保管基準を守り指定業者に引き渡す
封をした段ボール容器は、回収業者が来るまでの間、院内の決められた場所に保管します。この保管場所にも法律で定められた基準があります。「関係者以外が立ち入れないように囲いを設けること」や「感染性廃棄物置き場である旨の掲示板を設置すること」が必要です。
腐敗や悪臭を防ぐため、直射日光を避け、通気性の良い清潔な場所を選んでください。保管期間は極力短くし、定期的に契約業者へ引き渡します。引き渡しの際は、必ず手渡しや立ち合いを行い、容器に破損や液漏れがないかをお互いに確認することがトラブル防止につながります。
段ボール廃棄でやってはいけないNG行動とは?

医療廃棄物の処理には厳格なルールがあり、「知らなかった」では済まされない重大な責任が伴います。ここでは、現場でうっかりやってしまいがちな間違いや、絶対に避けるべき禁止事項について解説します。
一般ごみとして家庭用収集に出すのは違法
最も重大な違反は、医療廃棄物が入った段ボールを、地域のゴミ集積所(家庭ごみステーション)に出してしまうことです。たとえ中身が見えないように梱包していたとしても、これは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」違反となり、重い罰則(懲役や罰金)の対象となります。
また、感染性がない「梱包用の空き段ボール」であっても、事業活動から出たものは事業系一般廃棄物です。家庭ごみとして出すことはできません。自治体指定の事業系ゴミ袋に入るサイズであれば事業系一般廃棄物として出せる地域もありますが、許可業者への委託または自治体施設への直接搬入が必要です。
容器を再利用したり詰め替えたりしない
コスト削減のために、一度使用した感染性廃棄物の専用段ボールを再利用したり、スーパーでもらえる一般の段ボールで代用したりすることは避けるべきです。専用容器は、耐水性や強度、密閉性が計算されて作られています。一般の段ボールは湿気に弱く、血液などが染み出して底が抜けるリスクがあります。
また、一度封をした容器を再び開けて中身を詰め足す行為も危険です。開封時にエアロゾル(微細な飛沫)が発生し、スタッフが感染症に暴露する可能性があります。一度閉じた蓋は、焼却炉に入るまで二度と開けないのが原則です。
液体や鋭利なものを直接入れない
段ボール容器の内側に厚手のビニール袋がセットされている場合、環境省のマニュアルでは液状・泥状の廃棄物の梱包に使用できるとされていますが、手術で出た廃液や残血などを直接流し込むと、配送中の揺れや圧力で袋が破れ、段ボールに染み出して外部へ漏洩する事故のリスクがあります。より安全性を重視する場合や大量の液体の場合は、密閉性の高いプラスチック容器(赤色バイオハザードマーク)を使用することが推奨されます。
同様に、注射針などの鋭利なものも厳禁です。段ボールやビニール袋は簡単に貫通します。鋭利なものは、金属製・プラスチック製等の耐貫通性のある堅牢な容器を必ず使用してください(黄色バイオハザードマーク)。針刺し事故は、捨てた本人だけでなく、清掃スタッフや運搬業者など、処理に関わる多くの人をB型肝炎やHIVなどの感染リスクに晒すことになります。段ボールに入れるのは「柔らかい固形物」だけにするよう徹底してください。
処理業者への委託とマニフェスト管理はどうする?

医療廃棄物は、自院で焼却施設を持っていない限り、外部の専門業者に処理を委託することになります。この委託プロセスも適当に行うことはできず、法律に基づいた手続きが必須です。
許可を持つ収集運搬業者と契約する
廃棄物を委託する際は、都道府県知事などから「特別管理産業廃棄物収集運搬業」の許可を受けている業者を選定します。一般の産業廃棄物の許可しか持っていない業者には、感染性廃棄物を運んでもらうことはできません。必ず許可証の写しを確認し、有効期限が切れていないかをチェックしてください。
また、運搬だけでなく「処分(焼却など)」を行う業者とも契約が必要です。通常は収集運搬と処分を一括で手配できる業者が多いですが、法的には「収集運搬」と「処分」それぞれについて書面での委託契約を結ぶ義務があります 。
マニフェスト伝票で最終処分まで追跡する
業者に段ボール容器を引き渡す際、感染性産業廃棄物の場合は必ず「産業廃棄物管理票(マニフェスト)」を交付します。これは、廃棄物が排出されてから最終処分が完了するまでの流れを記録・管理するための伝票です。なお、実務上は感染性一般廃棄物と感染性産業廃棄物を区分せずに混合して特別管理産業廃棄物処理業者に委託することが認められており、その場合は全体に対してマニフェストを交付します。マニフェストには紙のものと電子マニフェストがありますが、現在は事務負担の軽減から電子化が進んでいます。
マニフェストの運用手順は以下の通りです。
| 手順 | 内容 |
| 1.交付 | 廃棄物引き渡し時にマニフェストを発行し、業者に渡す |
| 2.確認 | 運搬完了後、処分完了後にそれぞれの報告書(マニフェストの写しやデータ通知)を受け取る |
| 3.照合 | 委託した通りに処理が終わったかを確認し、期限内に処理が完了しているかチェックする |
| 4.保管 | マニフェスト(紙の場合は伝票)を5年間保存する |
段ボール容器を渡して終わりではなく、最終処分が終わった旨の報告を確認して初めて、排出事業者の責任が果たされたことになります。
まとめ
医療廃棄物の段ボール処理は、スタッフと患者様、そして地域社会の安全を守るための重要な業務です。
この記事の要点をまとめます。
- 医療廃棄物の段ボールは、中身入りなら「感染性廃棄物」、梱包用空き箱なら「産業廃棄物」に分別する。
- 感染性廃棄物の専用段ボールは、中身の形状に応じた色のバイオハザードマークを使用し、密封して焼却処理へ回す。
- 一般ごみへの混入や液体の投入は厳禁とし、必ず許可業者を通じてマニフェスト管理を行う。
正しい知識と手順を院内で共有し、迷いのない安全な廃棄フローを運用してください。